ブロックチェーンのインサイト(ド)

IPCC、気候変動へ明確な警告 – で、貿易への影響は?をメモる。

今回も翻訳の勉強として気候変動と貿易に関する記事を訳す。

原文は下記。

IPCC issues stark climate change warning – but what about trade?

This morning’s report from the IPCC warned that temperatures are very likely to reach or exceed 1.5°C of warming versus pre-industrial levels, by 2050. But what could this mean for global trade, trade finance and supply chains? TFG’s Deepesh Patel investigates.

今日公表されたIPCCのレポートでは、2050年までに1.5℃の気温上昇がほぼ起こりそうだと警告している。では、グローバルな貿易、貿易金融、サプライチェーンへの影響はどうだろう?

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が出した今朝のレポートによると、2050年までに産業革命以前と比べて1.5℃の気温上昇はほぼ間違いなく起こりそうとのことだ。ではこれが貿易、貿易金融、サプライチェーンにどのような影響をもたらすだろうか?3か月後のグラスゴーCOP26と、WTO(世界貿易機関)の12回目の閣僚会議(MC12)のために用意した、G7首相への強烈なメッセージとは別に、世界が気候変動とクロスボーダー取引をどうするのか、政治家が一歩踏み出してコミットする場面を目撃するかもしれない。

期待しすぎ?かもしれない。IPCCによる6番目のレポート(AR6)に貢献したワーキンググループ1の調査結果では、2011年以来、以前のAR5で測定した、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素を含む温室効果ガス濃度の上昇は、“明らかに人類の活動が原因“としている。

この注目のレポートによると、人類が排出したガスのせいで、地球の平均表面温度は、1850年-1900年以来、1.1℃上昇し、全ての国が2050年までに排出量を”ネットゼロ”になるまで大胆に削減しない限り、1.5℃-2℃の上昇まで届きそうとのこと。ところで、なぜこの数字が重要なのか?このレポートは先月、200人の科学者によって編集され、195か国によって承認されており、12万5千年前の最後の氷河時代以来、今日の気温は計測されていないと言う。

IPCCは”気候感度の均衡”を見積もっており、1.5-4.5℃から3℃程度とこれまでのレポートが想定していた閾値では、CO2レベルが2倍となってしまうかもしれない。これは科学技術が進展したためであるが、また我々は気候変動の現実に今生きていると認識しなければならない。レポートでは、人類と気候変動との関係性に懐疑的な人々を、強烈な言葉で非難している。

影響はもはや可能性ではなく、むしろ下記のような事象がいつ起きるかの問題と報告されている。

貿易にとって何を意味するのか

貿易と気候変動の議論は、長い間、政治家により個別に議論されてきた。貿易が気候変動に影響を及ぼし、またその逆であることも明確だが、両社の関連はあまり検討されてきていない。国際貿易は、この最近出たIPCCの報告書(ワーキンググループ1の評価)ではあまりカバーされておらず、強いて言うなら“インフラストラクチャー”や“輸送”といったキーワードがよく出てくる程度だ。これは特筆すべきで、貿易の自由化による経済成長がCO2排出量を増加させることを考えると、温室効果ガス排出量を一番出していて、気候変動を助長しているのは、貿易であるとも言える。

今後数か月でもっと力を入れて検証されるべき4つのエリアがある。これらは温暖化を1.5℃に抑え、2050年までにネットゼロに達するための取組を支えている。

1.   公的機関によるリーダーシップとコミットメント

政府、民間企業、そして市民社会は協働してCOP26の交渉で協働するだろう。しかし、今のところ、国連貿易開発会議(UNCTAD)、世界貿易機関(WTO)そして、経済協力開発機構(OECD)といった機関間ではっきりとした対話は行われていない。オックスフォード大学のシニア・リサーチ・アシスタント、Carolyn Deere Birkbeckと、ICCの事務局長であるJohn Dentonは最近、世界経済フォーラム(WEF)でこのように述べている。「今日に至るまで、気候と貿易に関する国際的な対話は別々に行われてきた。WTOでは、関係する政府機関が多すぎて、積極的に巻き込むのにためらいがあった。気候変動対策について、貿易関連の課題とオポチュニティーを対話することですら、ためらっていたのである。また興味深いことに、COPで気候変動に野心的だった多くの政府は、WTOでは同じように積極的ではなかった。」

温室効果ガスにほとんど貢献していない貧しい国が、実はその影響を最も受けやすかったりすることがしばしば起こる。そのため、既知の取組みに行動を起こすことは必須である。気候変動枠組条約(UNFCC)のCOP26では、平等な立場に立つ国々が必要性と1.5℃を維持する危機感を強調するだろう。

2. 貿易障害を削減し、気候変動対策をサポート

世界貿易機関(WTO)のドーハラウンド・マラケシュ協定は環境考慮商品の自由化や、環境に良い商品やサービス(例えば、温室効果ガス排出量の削減やエネルギー効率の向上)における貿易障害を後押しする。

化石燃料補助金や循環型経済のサポート、低炭素エコノミーへ変革するような文言を受け入れることは、グリーン貿易を推進、気候関連災害の軽減に繋がり、11月のMC12ではもっと注目を浴びるでしょう。一例として、2017年に12メンバーが合意した化石燃料補助金改革案、他には最近形成されたコスタリカ、フィジー、アイスランド、ニュージーランドとノルウェー間のACCTS貿易交渉では、気候と環境保護に向けた取り組みを支える貿易ポリシーに合意している。しかし、パリ協定を順守するには、もっと野心的なゴールが求められるだろう。

3.輸出信用機関(ECA)の専門家からの明確なコミットメントは化石燃料の支持を減らす

再生エネルギーへの転換に向けたファイナンスは、ここ数か月、特に注目を浴びている。しかし、石炭やほかの化石燃料へのエネルギー投資はどうだろう?

センシティブなトピックであるが、ECAの役割は、気候変動の文脈においてよく議論される。彼らは新興国・途上国で温室効果ガスの排出量を上昇させるプロジェクトをファイナンスしている。他の輸出信用機関、民間セクター、国際開発金融機関から金融サポートを断られることが多いからだ。

しかし、全ての民間金融機関がそうであるように、輸出信用機関は政府の気候変動削減コミットメントとパリ協定への歩調合せを求められ、おそらく輸出信用機関に対しては、化石燃料へのサポートを段階的に取りやめ、低炭素プロジェクトへの支援をより強くコミットするようプレッシャーがあるとみている。

いくつかの輸出信用機関は、気候に良いプロジェクトにインセンティブ付けし、ネットゼロを宣言する低炭素の取組みをベンチマーク、支援する取組を始めている。他には、未来への輸出金融連合(E3F)は、炭素集約型プロジェクトを徐々に減らし、パリ協定に足並みを揃えるよう、協力し合っている。

4. どのように保険を掛けるか

気候変動は我々の生活と表裏一体にある。ハリケーン、森林火災といった異常気象の増加と生物多様性に毎年数十億ドルの代償を支払っている事実に疑う余地はない。しかし、これは与信とポリティカルリスク保険市場にとって何を意味するだろう?

気候変動が及ぼす影響は、市場を混乱させ、多くの消費者と保険会社に影響を及ぼすだろう。突然、顧客は長期のエクスポージャーに晒され、会社のビジネスモデルは保険がきかなくなる。気候関連リスクのリスク低減措置は、特に炭素集約的産業に晒されている業界と共に、保険業界にとっても新たな課題となるだろう。CPRI市場にとっては、ポートフォリオのうち引受と投資に踏み込むことで、機会にも成り得るだろう。

グラスゴーのCOP26と今日のIPCCレポートのおかげで、再生エネルギープロジェクトのカバー率は増加しそうだ。しかし、CPRI市場はそのギャップを埋めるために踏み込むべきだろうか?プロジェクトとインフラへの融資という長期的な特性からすると、電力・エネルギーセクターへのエクスポージャーは保険会社を不安にさせる。オフショアとオンショアの再生エネルギープロジェクトにファイナンスする会社にとっては機会であり、したがって、ネットゼロへの移行に当たり、エネルギーポートフォリオを多様化させ、まだオイル、ガス、マイニング(BPLグローバルによると、昨年、CPRI市場に提示される取引の3分の1を占める)といった採取産業にファイナンスするにはギャップを埋める必要はある。CPRI市場にとって、ビジネスモデルを再考、金額の再調整、革新的な新たなソリューションの発見は必須となる。

「これらの数字が示すのは、石油依存の国に依存するより、パンデミックの衝撃から巻き返している脆弱な世界において、急速な経済減速を受け入れ、必要なサポートを必要なところに提供する必要がある。」とBPLグローバルのマネージングディレクター、Sian Aspinallは言う。

多国間協働の触媒となる?

気候変動への取組は、環境、社会そして経済に必須であると幅広く認識されている。綿密な温暖化対策は環境と経済協力の組み合わせであり、OECDと非OECD市場間における確かな目的となる。ポスト・パンデミックにおける市場と経済の再構築は、政府、官民セクターが、気候変動と1.5℃を達成するためのカーボン排出量軽減に向けて、グローバルな取り組みで協働する良い機会となるだろう。

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