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世界同時に発生したパンデミックはサプライチェーンの脆弱性と、未だに紙ベースであるグローバル取引の非効率性に疑問を投げかけた。これに対応するため、SWIFTはレポートを発行し、業界を上げて様々な関係者が協働し、”これで最後のデジタル化”とするよう、協力を呼び掛けている。
今では常識であるが、パンデミックがデジタル化を加速したが、グローバルな貿易はそうではない。SWIFTが先週リリースしたレポートによると、2020年にはかなり取引量が落ち込んだにも関わらず、デジタルチャネルを使った取引には急上昇がみられた。これは、業界が長年嘱望していた紙とマニュアル作業の排除が実現されたということ?いや、そうではない。
CitiのHead of EMEA Emerging MarketsであるEbru Pakcanはレポートの中で次のようにコメントしている。パンデミックが貿易デジタル化の転換点になったとは言えない。しかし、業界として、今ならそれが可能との自信はある。デジタル化に辿り着くには、「大多数による受け入れが必要であり、応急措置的な標準化が、これを達成するのたに重要なマイルストーンとなる。貿易は動かすには大きすぎる山であり、Covid-19が地震だ。」
’貿易のデジタル化:今がその時’のレポートでは、デジタルの方向性は、業務効率のためだけなく、リスク管理、ビジネス継続性が問題である、とSWIFTは主張する。事業会社にとって、デジタル化は流動性やファイナンスの最適化へ影響し、そして最終的には成長へ影響するため、重要なのだ。
貿易デジタル化に向けた取組みが多くある中で、業界が協働することが重要だ。そうしないと、多数のソリューションが互いに孤立したままとなるリスクがある。ICC(国際商工会議所)の貿易金融デジタル化のワーキンググループのCo-chairであるMichael Vrontamitisは、これを’デジタル・アイランド’と表現する。デジタル・アイランドは、企業、業界、政府が各自の個別最適のデジタル化を意味する。 ”結果として、紙の非効率性とパンデミックの時期に見てきたビジネス継続性の困難さだけでなく、新たな課題を生み出してしまうことになる”、とレポートの中での引用されている。
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パンデミックによって、デジタルな貿易ソリューションへのニーズが浮き彫りになった。SWIFTは2020年の間に、デジタル貿易チャネルの利用の増加が見られたと述べている。結果、事業会社や銀行はドキュメンタリー取引のデジタル化が可能となった。これはドキュメンタリー取引による貿易金融の大幅な減少と同時に発生している。2020年であれば、例えば、前週比で49%の減少が見られ、年間で11%の減少となっている。
Deutsche BankのHead of Trade Finance and Lending であるDaniel Schmandはレポートの中で、紙のドキュメントから変化がみられる、と言う。”しかしながら、同時にグローバルかつ相互に繋がった経済からの変化もみられる。脆弱なコモディティー価格と地政学的な緊張を原因に、不確実性が増加し、グローバルとは逆行した取引もある。”
貿易のデジタル化のために、業界はこれらの課題を解決し、法制面での調和、標準化と相互運用性を達成する必要がある。単に最適なテクノロジーを採用すれば良い、という話ではない、とSWIFTは言う。
SWIFTはパンデミック以前から、何社かの銀行と共にソリューション開発に取り組んでいる。FileActソリューション(大容量データ転送サービス)とMT759メッセージを活用し、ユーザーはドキュメントをデジタル形式で交換でき、その裏付けとなる信用状(事業会社から銀行、銀行から銀行の双方)と紐付けできる。パンデミック期間中、パイロット取引から商用サービスへとすぐに移行し、現在は無料で提供されている。
グローバルな貿易から摩擦を取り除きつつ、SWIFTは、その専門知識を活用できる3つの領域を特定した。断片化を排除するために新たなデジタル標準を創設すること、付加価値サービスを提供するエコシステム構築のために相互運用性を促進すること、そして、ICCのような他の業界団体と協働して広く情報発信することだ。
このレポートでは、業界に対して行動を呼びかけている。最終ページでは、”地殻変動が起こる段階にある”、と結論付けている。さあ、何を始めようか?